【2024年建設業法改正】著しく低い労務費の見積り禁止が閣議決定!改正の背景とは?概要をまるっと解説

行政書士宮城彩奈

こんにちは!
行政書士の宮城彩奈(@ayanamiyagi)です。

令和6年(2024年)3月8日、「建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律案」が閣議決定され、建設業労働者の確保や処遇改善に向けて、賃金原資の確保と下請事業者までの行き渡り、資材価格の増減による労務費へのしわ寄せ防止、働き方改革や現場の生産性向上のための措置が決まりました。

目次

処遇改善を法律に規定することになる背景とは?

建設業は、その性質上、他の産業に比べて労働条件が厳しいと言われ、低い賃金や長時間労働は業界全体で担い手の確保を困難にしています。では、その原因は何でしょうか?

季節労働と需要の変動

建設業は季節労働に影響を受けやすく、需要の変動が激しい業種です。
冬季などの気候条件の影響で工事が中断される場合があり、その間は収入が得られないことがあるため、季節労働の変動に対処するためには、収入の安定化策が求められます。

労働集約的な性質と建設資材の高騰

建設業は一般的に労働集約的な業種であり、多くの作業が人手を必要とするため、賃金を抑える傾向があります。
それに加わり、建設資材の高騰に対処するためのしわ寄せが賃金に影響を与えます。このような状況に対処するためには、労働市場の変化に柔軟に対応することが必要です。

労働条件の不安定さとリスク

建設現場では労働条件が不安定であり、安全性に関するリスクも高いが、そのリスクに対する賃金が似合ってないために、労働者の確保が難しい現状となっています。
こうした状況に対処するためには、労働環境の改善や安全対策の強化が求められます。

これらの要因が組み合わさり、建設業が他の産業よりも賃金が低く、就労時間が長いため、担い手の確保が困難となっている一因と言えます。

建設業と全産業を比較した賃金と労働時間
建設業:417万円/年(△15.6%)2,022時間/年(+3.5%)
全産業:494万円/年、1,954時間/年

改正の内容とは?

労働者の処遇改善

労働者の処遇確保を建設業者に努力義務を課します。
国は、処遇確保にかかる取り組み状況を調査・公表し、報告を受けた中央建設業審議会は、労務費等の確保と行き渡りのため「標準労務費」を作成し勧告します。

受注者および注文者の双方に対し、著しく低い労務費等による見積書の作成や変更依頼を禁止し、併せて、受注者による原価割れの契約(不当に低い請負代金)による契約締結を禁止します。

資材高騰に伴う労務費へのしわ寄せ防止

資材の高騰による、請負代金や工期に影響を及ぼすリスク情報がある場合、請負契約の締結までに受注者から注文者に提供するよう義務化します。

また、資材価格変動時における請負代金等の「変更方法」を契約書の記載事項として明確化し、資材価格が顕在化した場合に、受注者が「変更方法」にしたがって契約変更協議を申し出た時は、注文者は誠実に協議に応じる努力義務があります。

行政書士宮城彩奈

建設業法第19条に請負契約書に記載すべき事項が規定されています。
今回の改正により、資材価格変動時の変更方法が追加されるでしょう。

働き方改革と生産性向上

長時間労働を抑制するため、現行法では注文者にのみ著しく短い工期の請負契約締結を禁止していますが、注文者のみではなく、受注者においても著しく短い後期による契約締結を禁止します。

また、ICT技術を活用することを要件に、現場技術者にかかる専任規制と、公共工事における施工体制台帳の提出義務を合理化するため、国が(ICT技術活用による)指針を作成し、特定建設業者や公共工事受注者に効率的な現場管理を行うことを努力義務とします。

いつから施行する?

一部を除き、交付の日から起算して1年6ヶ月を超えない範囲で政令が定める日から施行としています。
2024年4月より、建設業界も働き方改革の規制を受け、さらには追って本改正も施行するため、労働環境や請負契約の見直し・整備が急務となります。

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