【知らないとマズイ】工期を短くすると建設業法違反になるって本当?

行政書士宮城彩奈

こんにちは!
行政書士の宮城彩奈(@ayanamiyagi)です。

建設業法には、「注文者は、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間を工期とする請負契約を締結してはならない」と定められています。(第19条の5)

どのようなパターンが建設業法違反に該当しうるのかをイメージしておくことがよいかと思います。

目次

建設業法に違反する可能性があるパターンとは?

  • 元請負人が、発注者からの出来るだけ早く引渡してほしいという希望に応えるため、下請負人に対して、一方的に受注した工事の下請工事を施工するために通常よりもかなり短い期間を設定し、短い期間を工期とする下請契約を締結した場合
  • 下請負人が、元請負人から提示された工事内容を適切に施工するため、通常必要と認められる期間を工期として提示したにも関わらず、それよりもかなり短い期間を工期とする下請契約を締結した場合
  • 工事全体の一時中止、前工程の遅れ、元請負人が工事数量の追加を指示したなど、下請負人の責めに帰さない理由により、当初の下請契約において定めた工期を変更する際、当該変更後の下請工事を施工するために、通常よりもかなり短い期間を工期とする下請契約を締結した場合
行政書士宮城彩奈

実は、上の3つのパターンは全て建設業法違反になる可能性があります!

適切な工期の確保の目的とは?

建設業就業者の年間の実労働時間は、全産業の平均と比べて相当程度長い状況となっており、建設業就業者の長時間労働の是正が急務となっています。

また、長時間労働を前提とした短い工期での工事は、事故の発生や手抜き工事にもつながるおそれがあるため、建設工事の請負契約に際して、適正な工期設定を行う必要があり、通常必要と認められる期間と比べて、著しく短い期間を工期とする請負契約を締結することは禁止されています。

通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間とは?

建設業法第19条の5の「通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間」とは、単に短い期間を指すのではなく、建設工事において適正な工期を確保するための基準として作成された「工期に関する基準」(以下「工期基準」といいます。)等に照らして不適正に短く設定された期間をいいます。

「工期基準」では、工期設定において元請負人と下請負人が果たすべき責任として、以下が求められています。

  • 下請負人の建設工事の適正な工期見積りの提出
  • 元請負人の適正な工期の見積りの尊重
  • 請負契約の締結に際しての元請人・下請負人間での適正な工期の設定

したがって、建設工事を施工するために通常必要と認められる期間に比べて著しく短い期間の工期(以下「著しく短い工期」といいます。)であるかの具体的な判断については、下請契約毎に、「工期基準」等を踏まえ工期設定において元請負人と下請負人の責務の遂行状況、取り決めた工期を前提として請負契約を締結した事情、下請負人が「著しく短い工期」と認識する考え方、元請負人の工期に関する考え方、過去の同種類似工事の実績、賃金台帳等をもとに、

  • 契約締結された工期が、「工期基準」を踏まえていないために短くなり、下請負人が違法な長時間労働などの不適正な状態で当該下請工事を施工することとなっていないか
  • 契約締結された工期が、過去の同種類似工事の工期と比べて短い場合、工期が短くなることによって、下請負人が違法な長時間労働などの不適正な状態で下請工事を施工することとなっていないか
  • 契約締結された工期が、下請負人が見積書で示した工期と比べて短い場合、工期が短くなることによって、下請負人が違法な長時間労働などの不適正な状態で当該下請工事を施工することとなっていないか

上記を総合的に勘案したうえで、個別に判断されます。

また、建設業については、労働基準法上、36(サブロク)協定で定める時間外労働の限度に関する基準(限度基準告示)の適用対象外とされていたましたが、働き方改革関連法による改正後の労働基準法において、労使協定を結ぶ場合でも上回ることのできない時間外労働の上限を法律に定めたうえで、違反について罰則を科すこととされ、令和6年4月1日から、建設業についても、災害時の復旧・復興事業を除き、この一般則(以下「時間外労働規制」という。)が適用されます。

下請負人は、時間外労働規制を守った適正な工期による見積りを提出するよう努め、元請負人は、下請負人から見積りが提出された場合には、内容を確認し尊重する必要があります。

時間外労働規制を上回る違法な時間外労働時間を前提として設定される工期は、例え、元請負人と下請負人との間で合意している場合であっても、「著しく短い工期」と判断されますので注意してください。

契約締結後の工期変更については?

著しく短い工期の設定を禁止している建設業法は、当初の契約締結のみ著しく短い工期を設定することに限らず、契約締結後、下請負人の理由ではない事由によって当初の契約どおり工事が進行しなかったり、工事内容に変更が発生したことなどにより、工期を変更する契約を締結する場合、変更後の工事を施工するために著しく短い工期を設定することも禁止しています。

なお、工期の変更時に紛争が生じやすいため、未然防止のため、当初の契約締結の際、建設工事標準下請契約約款第17条の規定(元請負人は、工期の変更をするときは、変更後の工期を建設工事を施工するために通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間としてはならない。)を明記しておくことが重要となります。

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